私は中国、近畿、四国ブロックを代表して、要請の機会を頂戴しました、広島県酪農政治連盟の温泉川寛明と申します。どうぞよろしくお願い致します。

　私は、昭和４２年に父親が酪農経営を始め、現在、私の息子が後継者として就農し３代続く酪農家でありまして、現在、２５０頭余の乳用牛を飼養し酪農経営に勤しんできました。

　私は、ＴＰＰ参加問題や円安など様々に酪農経営に襲いかかる厳しい情勢から、将来への不安が払拭出来ない中で、あえて乳用牛飼養頭数の増頭やパーラー施設に多額の投資を行い、将来とも継続する酪農経営を目指して挑戦を続けております。

　今や全国の酪農家戸数１万９千戸台と２万戸を割り込みました。私が生乳を委託販売します中国生乳販連の傘下には８１７名の酪農家が存在していますが、同連が設立した平成１３年度から１２年が経過した中で約５割の７７４戸が廃業しました。この酪友の減少に、淋しさが込みあげて来ます。廃業理由には、突如に襲った生乳計画生産による生産抑制策、飼料や生産資材の価格高騰、病気など様々であります。

　酪政連、国会議員の先生方には、これ以上、全国の仲間が早期の廃業を選択する事象を招かぬよう日本国の酪農、国土保全など、地にしっかりと根を下ろしての政治・施策支援のもとで、日本人の主食「米」の生産量に相当する生乳の生産基盤強化維持、酪農経営の安定を進められるようここに強く要請します。

　これに加えて、あえて次のことを要請します。

１．ＴＰＰ参加交渉にあたる上での姿勢

乳製品をはじめとした重要５品目の関税絶対死守を！この確保が出来ない場合は、交渉からの即時撤退の決断をお願いします。

２．酪農所得補償のための経営安定制度の法制化

①酪農経営の地域別生産コストに応じる構造的対策実現を！

　広島県は耕地面積が少なく、周辺が山に囲まれた中山間地域で酪農経営に勤しんでおります。

　少しでも、生産コストを抑制する考えから、集落営農法人（広島県内２２７法人・全国一番）と耕畜連携によりWCS（稲ホールクロップサイレージ）の作付けをお願いし、耕種農家又は法人側に１０ａ当たり８万円が交付される事業によって、この利用が定着しつつあります。

　国土保全・地球環境の多面的機能の維持を図る酪農経営者側への経営安定施策の支援を講じられることをお願いします。

　生乳生産コストは地域別に異なります。

　今般の乳価交渉結果は、１０月１日から飲用向け生乳取引に限り、生乳１㎏当たり全国一律５円の値上げと発表されました。

　生乳生産コストに及ぶ自給粗飼料の確保体制は、耕地面積などの違いから日本の各地域において異なるものと考えます。

　自給粗飼料を充分確保したくても出来にくい地域構造に気配りした国による施策支援をお願いします。

②公正取引委員会による「取引慣行指針」の見直しを！

　消費者にとって、良い商品が安く提供されることは、大変嬉しいことではありますが、市場競争原理主義のもとの“安売り合戦”の狭間で、生産者、乳業者、卸売り業者などが犠牲を強いられているものと考えますが如何でしょうか？

　顧みまして、平成１８年度から平成２０年度に亘り、連続的に世界穀物相場、燃油価格が高騰したことによりまして、酪農家の経営資力は底がみえ、限界感から、この対策を乳価値上げに求め続け、やっとこれが実現したことは記憶に新しいところであります。

　この乳価引き上げから、消費者への小売価格も牛乳１㍑当たり１０円乃至２０円の値上げが実現しましたが、消費量の減少と量販店による市場競争の激化によって、既に飲用牛乳の小売市場価格は、平成２１年度の乳価値上げ前の価格迄にほぼ引き下がっています。

　市場の安値競争により客単価は低下し、メーカーが疲弊する負のサイクルに陥っているのでは無いでしょうか。私たち酪農家も、酪農理解醸成活動を通じて牛乳の小売価格値上げを求める行動を新聞等への広告掲載を通じて行っておりますが、今般、生乳１㎏当たりの飲用乳価５円の値上げ分に、乳業者側の包材や諸資材の高騰分が、末端小売価格に適正に反映されるような構造的な施策が講じられるようお願いします。

　このことは、去る７月２２日発刊の「日刊酪農経済通信」が報じた公正取引委員会による「取引慣行指針」を見直すよう経産省指摘と報じられておりましたが、この点に着目した政治・施策運営をお願いします。

中国・四国・近畿ブロックからの発言代表
広島県酪農政治連盟所属
酪農家　温泉川 寛明